研究会「小角散乱とナノ粒子製剤のCMC」
主催: SPring-8ユーザー協同体(SPRUC):放射光を用いた薬物輸送と体内動態に関する研究会
共催: 北九州市立大学 文科省共同利用・共同研究拠点プロジェクト
日本薬剤学会物性フォーカスグループ
数十ナノメートルからサブミクロンの大きさの薬剤技術が最近注目を浴びています。この中には、合成や天然の脂質を数種類混合して製剤されるリポゾーム製剤や、両親媒性高分子からなる高分子ミセル、多糖を用いた製剤などが入ります。これらの製剤は、核酸医薬やタンパク製剤、疎水性の低中分子医薬の体内動態を制御するために利用されています。例えば、コロナウィルスに対するワクチンはmRNAをリポゾーム製剤化したものと言われています。このようなナノ粒子製剤が増える中、その粒子の物理化学特性を正確に簡単に測定できる方法、副生成物や不純物を同定する方法が求められています。また、このような測定技術は医薬品のレギュラトリーサイエンスの観点からも重要です。これらの方法は、低分子医薬品で用いられた方法とは大きく異なります。
従来はほとんど、角度固定の動的光散乱で流体力学的半径を測定するだけで事足りるとしてきました。しかし、粒子の分子量、会合数、それらの分布、主成分以外の副生成物・残渣物の分析が求められています。このような中、可視光やX線、中性子などを用いた溶液小角散乱の役割は大きいと考えます。また、それらの散乱法と分級カラムや流動場分画法を組み合わせた方法が注目されています。小角散乱のコミュニティとしても、ナノ粒子製剤の研究・開発および管理に役立つ技術として存在感を示していきたいと考えます。従いまして、ナノ粒子製剤の解析に関して、世界的な規格化の動向や、医薬品の開発現場と小角散乱のかかわり、どこまで小角散乱で明らかにできるかなど本研究会を通して議論したいと思います。
注1:CMC(Chemistry, Manufacturing and Control)」とはレギュラトリーサイエンスの立場から、広義には医薬品の原薬や製剤についての化学・製造、およびその分析を指し、狭義にはFDAなどの規制当局のガイドラインに準拠した製造管理や製品規格化のための分析方法を指す。ここでは狭義の意味で使っている。
注2:ナノ粒子製剤は、広くはバイオ製剤に含まれる製剤技術であると考えており、核酸医薬、抗体医薬との関わりも深いと考えられます。
参加費:無料 (参加登録は下のフォームからよろしくお願いいたします。)->締め切りました
日時:2021年12月23日 10:00-18:00
場所:星薬科大学内(公聴者は原則オンライン参加、後日参加URLをお送りいたします。)
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アンケート
プログラム
10:00~10:10
研究会開催にあたって
星薬科大学 米持悦生 教授
10:10~10:55(10:55~11:00 質疑応答)
粒子径計測の国際標準化の最近の動向と小角X線散乱法
㈱リガク 伊藤和輝 博士
11:00-11:45(11:45~12:00 質疑応答)
ナノDDS製剤の物性測定と品質管理
北里大学 加藤くみ子 教授
12:00~12:45
バイオ医薬品の品質分析における粒子計測の実状と小角X線散乱法の利用
産業技術総合研究所
本田真也 副部門長
座長 米持
座長 伊藤
昼食休憩(食堂での密集をさけるため時間をずらしてあります )
14:00-14:45
小角散乱による溶液生体高分子構造解析への新たなる挑戦
ー SAXS+SEC+AUC+SANS and Computationー
京都大学 杉山正明 教授
14:45-15:30
小角散乱法で計測したナノ粒子製剤
北九州市立大学 櫻井和朗 教授
休憩
座長 櫻井
15:40~
製薬企業から装置メーカーや小角散乱コミュニティへの要望(アンケート結果)
日本薬剤学会・物性FG 星薬科大学 米持 悦生 教授
終わり次第~
パネル討論「アメリカとEUで進んでいるナノ粒子解析規格化の流れに遅れないために」
討論の中で、中性子や放射光でのナノ粒子製剤の利用についても話題とする。